撮影の際に「1段上げて!」「1/3段下げて」…って言われてもピンとこないんですけど…ってなってませんか?
こんにちは。スタジオたちまちの秦野です。WordPressでウェブサイト制作をしていることが主なはずなのですが、ここ最近はカメラトークばかりしちゃっています。学んだらアウトプットしないと忘れちゃいますしね…。
さて今回は「カメラを使って撮影をしている時に使う、明るさを変化させる時に言われる「段」ってなんぞや?」というお話です。この「段」はもちろん段階の事を指していて、「EV」という表記でも使われています。ちなみにこの「EV」とはエクスポージャーバリュー(Exposure Value)と呼ばれていて、「露出値」…「明るさの変化」というような意味で使われています。ここでは「段」という呼び方で話を進めていきます。
結論から言うと、この「段」というのはある一定のルールに沿って変化する数値の間隔を言います。例えば2・4・8・16・32…みたいな、2の倍数ルールで数を数える…的な感じの数え方です。今回は【ISO感度】【シャッタースピード】【絞り値(F値)】そして【ストロボの発光量】で表現される値について簡単に書いてみました。
ISO感度の表現方法と「段」の間隔
ISO感度とはセンサーが光を吸収する感度のことです。ほとんどのカメラはこのISO感度の単位を100・125・160・200…と変化させて露光量(明るさの変化)をコントロールしていきます。この変化する数値はどの間隔で「段」と呼ばれるのでしょうか。
上のイラストの通り、100の次は200、200の次は400とキレイに2倍の数値ごとに「1段」と呼ばれています。その「1段」の間隔は3分割されています。ISO100から1段明るくした場合はISO200となります。その間には1/3ずつ数値が設けられていて、ISO125・ISO160と変化していきます。
「1段明るく!」と言われたらダイヤルを右に3メモリ動かせば良いってことですね。
少し難しくするとこのような言い方もできます。
「ISO800から2と2/3段暗くして」
この場合はISO800から2段暗くする場合、ISO200となります。加えて2/3段暗くとなると、更に2メモリ分動かしてISO125まで数値を下げる…と言う事になります。実際にはこのような事を言われることは無いかもしれませんが、「1段は3分割されている」ということを覚えておけばOKです。
シャッタースピードの表現方法と「段」の間隔
シャッタースピードとは、光を記録する光学センサーに取り込む光の量を物理的な幕を上げ下げして調節するときの速さの事を言います。光をカメラに取り込む時間を調整する役割があります。基本的には1/1から2倍の変化、もしくは1/2の変化で「1段」という変化の言葉が使用されています。そしてこの「1段」の変化の間には、1/3ずつの変化が設けられています。例えば上のイラストの1/125と1/250の「1段」の変化の間には1/160・1/200という数値が設けられているということです。こちらもダイヤルを3回動かすことで「1段」の変化となる、と言う理解ができます。
さてここで「あれ?」となった方がほとんどではないでしょうか。
いや…だって既に1/8の2倍は1/16になるはずなのに、1/15とかになってて…ぜんぜん違うじゃん!
この現象は「人が使いやすい数値にしている」事で発生していることが理由です。理屈では2倍もしくは1/2の変化が起こっているのですが、扱う数値が微細になりすぎてしまうため「実際に使用するうえで支障のない数値として表示する」という理由で現在の数値が使われているようです。
ともあれ、撮影を行う上ではこの「段」という変化は3メモリ分の調整で「1段」変化する、ということを覚えておけばOKです。
シャッタースピードが1/125だったとして、「2段と1/3早くして(暗くして)」と言われたら…2段変化で1/500、更に1/3動かして1/640が正解か…混乱するなぁ
シャッタースピードは「暗く」「明るく」というよりも「早く」「遅く」というイメージのほうが強いですよね。定常光(常に光が供給されている)での撮影の場合は「早く」「遅く」の考え方が重要ですが、スタジオ撮影で瞬間の光(ストロボ光)を使用する場合は重要ではなく「暗く」「明るく」が主な考え方になります。なので瞬間光を使ったスタジオ撮影ではシャッタースピードは固定の場合が多いようですね。
絞り値(F値)の表現方法と「段」の間隔
絞り値(F値)とは、レンズの中にある“羽”と呼ばれる光を通す穴を広げたり狭めたりして調整する開口部分の広さを示しています。広げると数値が低く、狭めると数値が高くなることが特徴です。数値が低いと光が沢山入ってくる、数値が高いと光が入る量が少なくなる、と言うイメージです。
この絞り値(F値)はカメラに取り込まれる光の量が2倍になるまたは1/2になることで「1段」の変化が起こります。F2.8からF4に「1段」変化することで光の量が1/2になる(暗くなる)…という考え方です。
ここでポイントは「表示の数値は光の量の2倍や1/2という量を示しているわけではない」というところです。これは円の面積の変化と光の量の関係が数値で表されているからです。表示されている数値は単純なわかりやすいルールになっていないので、理由は置いておいて数値を記憶しておく必要がある項目です。
この絞り値(F値)もまたISO感度やシャッタースピード同様に、「1段」の間隔は1/3で変化しています。例えばF4からF5.6までが「1段」となりますが、その間にはF4.5・F5と言った変化があります。
うう…ルールのない面倒な数値が出てきて辛いなぁ…。とりあえず絞り値(F値)も1/3ずつ変化しているってことだけ覚えておこう…。
例えば「絞りF11から3段と1/3明るくして」と言われた場合はどうなるか考えてみます。まず「明るく」ということなので光を沢山取り込みたい=レンズ内の開口を広げる=絞り値(F値)は数値を低くする、ということになります。なのでF11から3段数値を下げると、F5.6(上のイラストを参照)になります。更にそこから1/3数値を低くすると、F5となります。…ということで答えは「F5」ということになります。
実際に使う場面は少ないかもしれませんが、覚えておくと色々と理解が深まるのでぜひ頑張って学んでみてください。
ストロボの発光量の表現と「段」の間隔
ストロボとは電力を使い、人工的に発光させることで撮影時の明るさを調整することのできる機器のことです。このストロボは使用するストロボそのものの能力により発光する力が異なりますが、その発光量を分数表記で調整しています。例えば1/1の表記の場合は、その使用するストロボが持つ能力の最大発光量の設定を示しています。その最大発光量から、1/2となると純粋に最大発光量の半分、1/4となると更に半分…というようにとてもわかり易い表記になっています。
この変化は1/1基準にして、2倍になるもしくは1/2になる事で「1段」という変化を表しています。例えば1/8と表記があるとします。「1段明るくして」と言われた場合1/4となります。「1段暗くして」と言われた場合は1/16となります。数値は整数で倍もしくは半分の数値のためとても理解しやすいですね。
ストロボの発光量の変化には「段」の単位があると説明しました。このストロボの発光量の「段」の変化には更に細分化された表現値があります。基本的にはこれまで解説したISO感度やシャッタースピード、絞り値(F値)と同様にストロボの発光量も「1段」の間隔内で分割した変化が行うことができます。
ストロボの種類は大きく3つに分かれます。クリップオンストロボ・モノブロックストロボ・ジェネレーターストロボです。このうちクリップオンストロボは「1段」の間隔は1/3となり、+0.3・+0.7と言う2段階の変化があります。モノブロックストロボとジェネレーターストロボはなんと「1段」の間隔は1/10の変化があります。+0.1から+0.9までの細かな調整が可能です。
クリップオンストロボ
特徴
- ポータビリティ: 小型で軽量、カメラのホットシューに直接取り付け可能。
- 電源: 一般的に単三電池や専用バッテリーパックで動作。
- ガイドナンバー: 通常30~60の範囲。
- 用途: ポートレート撮影、イベント撮影、ロケーション撮影、軽量機材が求められる状況。
- コントロール: TTL(Through The Lens)測光による自動露出調整機能が搭載されているものが多い。
長所
- 持ち運びが容易で、セットアップが迅速。
- 多くのカメラと互換性があり、柔軟に使用可能。
- 高度な自動化機能(TTL測光)を持つ。
短所
- 発光量が制限されており、大規模な撮影には不向き。
- バッテリーの持続時間が短いことがある。
モノブロックストロボ
特徴
- 一体型: ストロボ本体に発光部とパワー供給部が一体化。電源: 内蔵バッテリーまたは外部電源(AC電源)。ガイドナンバー: 通常80~200の範囲。用途: スタジオ撮影、屋外撮影(バッテリー使用の場合)、ファッション撮影、プロフェッショナルポートレート撮影。コントロール: 手動設定、リモート制御、TTL機能が搭載されているものもある。
長所
- パワフルな発光量で、広範囲を照らすことが可能。バッテリーモデルもあるため、屋外でも使用可能。モディファイア(ソフトボックス、リフレクターなど)との互換性が高い。
短所
- クリップオンストロボよりも大きく、重い。セットアップに時間がかかることがある。
ジェネレーターストロボ
特徴
- 分離型: パワー供給部(ジェネレーター)と発光部(ヘッド)が分離。
- 電源: 高出力の専用パワーパック。
- ガイドナンバー: 非常に高く、200以上の範囲。
- 用途: 大規模なスタジオ撮影、広告撮影、ファッション撮影、大規模プロジェクト。
- コントロール: 高精度の出力調整、リモート制御、多灯配置が容易。
長所
- 極めて強力な発光量で、大規模なセットや多人数の被写体に対応可能。
- 高速リサイクルタイムで連続撮影に適している。
- 多灯システムの構築が容易。
短所
- 重量があり、ポータビリティが低い。
- 高価で、運用コストも高い。
- セットアップと操作が複雑になることがある。
まとめ〜「段」はだいたい3分割
今回はカメラ機器やストロボに関する明るさを調整する時に使う値の変化「段」の解説をそれぞれの基本的な説明といっしょにお話していきました。ISO感度、シャッタースピード、絞り値(F値)、ストロボの調光それぞれの表記で使用する「段」はそのほとんどが3分割されて使用されている、という事がわかりましたね。ストロボの調光でモノブロックストロボ、ジェネレーターストロボのみ、「段」が細かく10分割されていることもわかりました。
ぜひこの知識を活かして撮影を楽しんで見てくださいね。