1986年7月、東広島。ひとりの少年がこの世に生を受けた。
名前は秦野堅市。
生まれながらにして自由を愛し、既存の枠にはまることを拒んだ少年は、幼い頃からすでに「世界は自分の遊び場である」という信念を持っていた。
第一章:自由な魂、幼少期の大冒険
幼稚園時代、彼はすでに世間の常識に挑戦していた。
アンパンマンの紙芝居が見えないと訴えたことで「あ、自分、目悪いんだ」と近視を自覚し、未来のメガネ族としての道を歩み始める。(後に小学生でメガネの男たちを集めて「メガネ族」を名乗ることとなる)
一方で、女の子を家に呼んで遊び、遊びに来た男友達を追い返すという、幼児とは思えぬ独自の勢力図を確立。
しかし、そんな自由奔放な彼にも試練は訪れる。
幼稚園の帰り道、突如として野良犬に追いかけられる。
心の中で流れたBGMはおそらく「G線上のアリア」。
全力疾走の末、彼は「犬=敵」という公式を脳内に刻み込むこととなった。(大人になった今は大丈夫です)
さらに、近所の家でトイレを借りた際、流れないレベルの大便をしてスッキリ放置するという暴挙に出る。(もちろん幼少期のときのお話ですよ)
この事件が後の人生にどのような影響を及ぼしたのかは、誰にも分からない。
第二章:「はだのワールド」建国
小学生時代、彼はますます自分だけの世界を築き上げていく。
休み時間に友達と遊ぶことよりも木に登ることを選び、授業中には工作に没頭しすぎて、先生に叱られる…かと思いきや、なぜか教室の最後部に「はだのワールド」という謎のクリエイティブエリアが設置される。(先生の懐が大きかったんだなとしみじみ)
そこには彼が生み出した作品が並び、担任の先生はこの異質な才能を受け入れた。(ほんとすみません)
さらに、独自のカードゲームを開発し、仲間と遊ぶなど、小学生にして「ゼロから何かを創る」という感覚を体得していた。
一方で、友達との距離感を測り間違え、絶交を経験。
自己中心的すぎたのかもしれない。(いや、まちがいなく自己中心的だった)
しかし、それでも彼のユニークな視点は消えることはなかった。
第三章:試練の中学時代と反撃の右ストレート
中学に進学し、なぜかソフトテニス部に入部。
しかし、小学生時代の「面白キャラ」が仇となり、いじめを受ける。
挙げ句の果てに柔道の授業中に足を骨折し、テニス部を退部。(関連性ゼロだけど良い口実だった)
このまま終わるのか…と思いきや、以前から誘われていたバスケ部に転向。
なんとそこでも同様の事が仇となりいじめは続いたが、ある日ついにプッツンとキレて右ストレートを炸裂。
その瞬間、世界が静まり返り、いじめは終わった。
だが、その経験から学んだのは「力の解決はあるが、自分の性格には向いていない」という微妙な教訓だった。
バスケ部では個人プレイに走り、レギュラーにはなれなかった。
勝利よりも「カッコいい技の習得」に夢中になりすぎた結果だった。
勉強も苦手になり始め、中1の英語テストで12点を叩き出すという偉業を達成。
国語だけは得意だったが、短期記憶頼みの勉強スタイルでは長期戦には勝てなかった。
第四章:空手と酒と、美少女ゲームと、人生の転機
高校卒業後、四国の地に足を踏み入れた秦野堅市。
そこは未知なる世界…いや、未知なる「沼」が待ち構えていた。
美少女ゲームの布教活動──未知なる扉が開く
大学生活が始まってすぐ、信頼していた友人が妙に神妙な顔で近づいてきた。
「秦野、お前も一度でいいから、やってみろ」
そう言って手渡されたのは、一見するとただのパソコン用ゲームだった。
「なんだこれ?」と興味本位でプレイを始めた彼は、気がつけば夜が明けていた。
そしてまた次の夜も…。
そしてまた次の夜も…。
彼の人生で最も無駄…もとい、最も濃密な時間が過ぎ去っていった。
「俺は一体、何をしているんだ…?」
そんな疑問を抱きつつも、彼は次の選択肢を模索することになる。
「カッコよさ」を求めて中国拳法へ──しかし…
次に彼が目をつけたのは、幼い頃から憧れていた中国拳法。
「カンフー映画の主人公みたいに動けたら最高じゃね?」
そんな軽いノリで中国拳法クラブに入部。
しかし、彼はすぐに気づいた。
部長になれない。
「この世界、上には上がいる…」
やがて、その事実を受け入れられなくなった彼は、ひっそりと退部した。
ワカメと子どもと、人間としての成長
その一方で、彼は意外にも「子どもと戯れるクラブ」にも所属していた。
大学には小学校の先生を目指す学部があり、そのメンバーたちが障害者児童や学童でボランティア活動をするクラブがあった。
彼も学童のアルバイトを経験し、子どもたちと関わることで、「人に何かを伝える楽しさ」に目覚めていく。
さらに、なぜかその流れで鳴門のワカメ漁に駆り出されることになる。
そして彼は衝撃の事実を知る。
「ワカメって、海の中じゃ緑色じゃない…!」
人生で最もどうでもいいけど、なぜか衝撃的な学びであった。
極真空手、鳩尾(みぞおち)への衝撃
しかし、そんな平和な活動の傍らで、彼は本気で極真空手に打ち込んでいた。
四国内・関西方面の猛者たちと共に稽古を重ね、自分の成長を実感する日々。
そしてある日、彼は調子に乗る。
「俺、強くなってきたんじゃね?」
世界大会出場経験のある先生とのスパーリング。
勢いよく足払いを仕掛け、見事に先生を転がす。
その瞬間、彼の脳内にファンファーレが鳴り響いた。
「いける…!」
だが、次の瞬間。
先生のパンチが鳩尾(みぞおち)にめり込む。
思考が止まる。
呼吸ができない。
視界が歪む。
ワンパンKO。
この時、彼は人生の大切な教訓を得た。
「調子に乗ってはいけない」
空手同好会の設立と強制参加
しかし、その経験で心が折れることはなかった。
むしろ、「俺はこの道を極める!」と決意し、ついに大学内に「空手同好会」を設立。
問題はメンバーだった。
「誰も来ないのでは?」という懸念があったが、彼には秘策があった。
「強制的に連れてくればいい」
結果として、半ば強制的に色々な学生を巻き込み、多い時には10人ほどのメンバーが集うまでに成長した。
しかし、ここで新たな問題が発生する。
彼は当時ワンダーフォーゲル部にも所属していたのだが、
そのメンバーをも空手同好会に半ば強制的に参加させるという、暴君のごとき采配を発動。
ワンダーフォーゲルの仲間たちは、登山に来たはずが、なぜか空手の型を覚えさせられていた。
今になって思えば、申し訳ないことをしたと反省している。
酒とカラオケと、人生最大のピンチ
そんな傍ら、彼は飲み屋でアルバイトを始めていた。
持ち前の社交力を発揮し、常連たちと酒を酌み交わす日々。
ある日、何気なくカラオケを歌ってみると、店中がどよめいた。
「お前、めちゃくちゃ歌うまいな!!」
「俺、天才かもしれん」
そう思った彼は、カラオケでますます調子に乗るようになる。
しかし、そんな彼に人生最大のピンチが訪れる。
ある日、店で知り合った女の子と付き合うことになったが、後に彼女の背後には“怖い人”の影があることが判明。
ついに呼び出しを喰らう。
「これは…終わったかもしれん」
しかし、ここで発動したのは、これまでの人生で培った「話術」と「愛嬌」。
持ち前のコミュ力を駆使し、奇跡の生還を果たす。
「人生、なんとかなるもんだな」
この時、彼はそう確信した。
起業家の考え方との出会い
この頃、ある人物から「アントレプレナー」という言葉を教えられる。
「自分の力で何かを生み出し、社会に価値を提供する仕事」
確かに魅力的だったが、当時の彼はその本質を深く理解するには至らなかった。
それよりも、目の前のバイト、空手、カラオケ、美少女ゲームで忙しかったのだ。
彼の人生の転機は、まだ少し先に訪れることになる。
第五章:家族、別れ、そしてクリエイティブの目覚め
大学卒業後、秦野堅市はあるキャッチコピーに心を奪われた。
「皿を洗いながら未来を見よう」
…未来を見ながら皿を洗うとは、一体どういう意味なのか?
哲学的な響きに誘われるように、彼は飲食業界へ飛び込んだ。
しかし、現実は厳しかった。
初めての給料は、まさかの8万円。
「えっ、これってバイト代じゃなくて…給料?」
不安と疑問を抱えながらも、気づけば彼は店舗責任者という謎のポジションに就いていた。
「責任者って…俺、まだ何もわかってないけど?」
戸惑う彼を支えてくれたのは、現場を熟知したパートのお姉様方だった。
「あんた、これくらい覚えなさい!」「ちゃんとしなさい!」
彼女たちの叱咤激励を浴びながら、なんとか日々をこなす。
この時期に身につけたスキルの一つが、異常な皿洗いスピードの向上である。
「誰よりも早く、誰よりも美しく…」
まるで修行僧のように皿を洗い続けた結果、どんなに汚れた皿でも一瞬でピカピカにする男へと進化した。
広島へ、そして結婚…からの別れ
そんな日々を過ごしながら、ある日ふと思った。
「俺、そろそろ広島に帰りたい…」
都合のいい理由を探し、ついに広島への転職を決意。
これで新しい人生が始まる…はずだった。
実はこの頃、彼はすでに結婚していた。
大学卒業とともに人生の伴侶を迎え、家庭を築いていたのである。
しかし、広島に戻ってしばらくすると、その関係に変化が訪れる。
気づけば、伴侶とお別れすることになっていた。
そして始まったのは、シングルファーザーとしての生活。
シングルファーザー生活、地獄…ではなく仮面ライダー
シングルファーザーの道は険しい、と思われがちだが、彼は意外と楽しく過ごしていた。
もちろん、多くの人に助けられながらではあったが、毎日は新たな学びと発見の連続だった。
そんな生活の中で、彼はある分野に異常なまでに詳しくなっていく。
それが…
「仮面ライダー」
子どもと一緒に観ているうちに、気づけば秦野自身がどっぷりハマっていた。
フォームチェンジ、必殺技、シリーズの歴史まで網羅。
大人になってから仮面ライダーに詳しくなるという、予想外のスキルを手に入れることになった。
ちなみにお気に入りは仮面ライダー555(OPがカッコいい)
農業に関わる仕事と、新たな旅
この頃、彼は農業に関わる仕事に就くことになる。
農業資材の営業として、中国四国を飛び回る日々。
時には九州、関西、中部地区まで出張し、各地の農家や企業と関わる。
畑の土を踏みしめ、大地の匂いを感じながら、彼は思った。
「俺、いろんなところに行ってるな…」
営業としての経験を積み、人とのコミュニケーションスキルも磨かれていった。
ただ、本当に自分がやりたいことなのか?
その答えは、まだ見えていなかった。
本を読み漁る日々、そして転職へ
悩みながらも、彼はひたすら本を読み漁った。
仕事の合間、寝る前の時間、休日…とにかく知識を吸収することに夢中になった。
「俺は何をしたいのか?」
「どうやったら、自分の力で生きていけるのか?」
そんな問いを抱えながら、彼は次の一歩を模索していた。
そして、子どもが小学生になるタイミングで、再び転職を決意。
新しい環境で、新しい挑戦が始まることになる。
クリエイティブの目覚め、そして未来へ
シングルファーザー生活を送りながら、彼の中で何かが蘇りつつあった。
それは、幼い頃の**「はだのワールド」**の感覚。
自分の手で何かを作ることの楽しさ。
世界を少し違った視点で見ることの面白さ。
そしてついに、彼はPCを開き、Web技術を学び始める。
さらに、カメラにも興味を持ち、写真の奥深さに引き込まれていく。
それは、単なる趣味ではなかった。
いつしか、それは仕事へとつながっていく。
「俺は、これで生きていくかもしれない。」
そう確信した時、彼の中で新たな物語が始まっていた。
最終章:フリーランスとしての覚醒
コロナ禍で「自分に何ができるのか?」と自問自答する。
そこで、かつての「はだのワールド」の感覚が蘇る。
PCを開き、独学でウェブ技術を学ぶ。
同時に、カメラにのめり込み、写真の奥深さに気づく。
気がつけば、それは「仕事」になっていた。
現在、彼はウェブ制作とカメラを駆使し、フリーランスとして活動している。
ただの撮影ではない。
「その人の魅力を最大限に引き出す」というコンセプトのもと、クライアントに寄り添ったクリエイティブを生み出している。
『はだのワールド』は、まだ続く。
子どもの頃から変わらない。
自分だけの視点を持ち、ゼロから何かを創り出す。
それが、秦野堅市という男の生き方なのだ。
